みらいへのバトンVol.4 「ココロオドル食卓は心の栄養!」大野倫子さん

男子主体ではなく、女子力の高いオシャレなバーベキュー(以下BBQ)があったろうか!?
千葉の米井梨園を舞台に毎月1回、繰り広げられるのは、その名も『乙女のスマートBBQ』。
準備も調理もコツを知って、軽やかに樂しむスマート&スタイリッシュバーベキューを提唱する『日本バーベキュー協会』の意志を継ぐ。
管理栄養士の傍ら、東京スマートBBQ協会の代表を務める大野(旧姓米井)倫子さん。
代々続く農家に生まれ、採れた野菜の手料理を大家族で囲む暮らしで育った倫子さんが、母の背中から学んだ『豊かな食』に触れる。

プロフィール
大野倫子さん

管理栄養士、
東京スマートBBQ協会とKITCHENCRUISER代表
「食を通して心も綺麗になる」ことを確信して、
笑顔が広がる食スタイルを多面的に提案し続ける。

400年続く農家に生まれた母娘

大野(旧姓米井)倫子さんが生まれた米井梨園は、400年も受け継がれる農家。
「うちの並びは全部昔からの農家で、どこもいまだに代々続いているんですよ。珍しいでしょ」と連なる通りを指しながら話すのは、倫子さんの母、絹恵さん。
梨が作られるようになったのは、絹恵さんが農大に通う大学生の頃で、「ある日、気づいたら父が植えていたの。育つまで5年かかり、梨園になってからは40年以上になるわね」。
絹恵さんは朝6時に梨をもぎ、スタッフとともに1日に約800キログラム(約3000個強)を仕分けする。
箱詰めの梨を選定する手つきは機敏ながらも優しい。
作業中に、梨を買いに車を横づけする客が何人も訪れる。
「昔から家族で親しんでいる味だから」、「今日は贈答の発送依頼に」……。「梨を買いに来たついでに、紫蘇やら野菜やらついでに採らせてもらっちゃうの」とずんずん畑に入って行く常連さんも。
野菜の料理情報交換など、絹恵さんとの立ち話が尽きない様子は見ていて微笑ましい。
「ここの梨は一度食べたらやみつきなるわよ」と常連さんの言葉どおり、絹恵さんが大切に育てた梨(幸水)が評価され、今年(2015年)千葉県知事賞を受賞した。

農家に生まれ、いずれ自分がここを継ぐことは、親の言動から察知していたという絹恵さん。
「私、いい子だったのね。背きもせずに従ったわ(笑)」。
けれど、絹恵さんが倫子さんに伝えたのは一言だけ。
「女性はどんな仕事をしていても、家族の食べることと育てることに関わる。栄養士になれば家族のためにおいしいごはんを作ることができるよ」。
中学生の時にそう言われた倫子さん。「小学3年から料理は手伝っていましたが、当時はぼんやりと受けとめた程度。今、食についていろいろな角度から深めることができているのは、母のあの一言のおかげだったと思います」。

採れ頃や状態の良さをピタリ見極めるのは長年の経験

「皮はだが甘いの。だからできるだけ薄く細く皮をむくことよ」と絹恵さん

マイナスの体を作らない使命

管理栄養士としての道を歩んだ倫子さん。栄養指導を重ねているうちに、「身体を悪くした人をゼロまで戻すより、悪くならない人を増やすこと」に注力するようになった。
「自分ちの畑で採れた食材で、たくさんの手料理を作って大家族で食べる。その食卓が当たり前で育ったので、コンビニや冷凍食品に頼る人の多さに驚きますね」。
水の使い方や熱のまわり方、下処理など少しポイントをおさせるだけで料理が光ることを伝えられたら、料理=面倒という気持ちが軽くなるだろう。手間数を減らしおいしい料理が作れるようになれば、健康管理に役立つ。その思いから、栄養士の仕事を続けながら、移動式レストラン『キッチンクルーザー』を立ち上げ、オリジナル献立でパーティのケータリングや料理教室を開いた。あっという間の3年。笑顔になった多くの人を見てきて、手作りの力強さを実感するとともに、さらに手作りの楽しみを味わってもらえるアイデアを更新中だ。

一方で「手作りしていれば安心」と単純に考えていたことが、ある日、夫の一言でハッとした。
「調味料にも添加物が入っているよ」。それまでに構築した400のレシピを潔く全部捨て、一から作り直した。
「食べることにハレとケがなくなっている時代だよね」。その言葉も、倫子さんに響いた。
世界中の食材が手に入りやすくなり、欲したものばかりを追う。日常がハレばかりになりがちだ。
食材や場面が特別な食と、日常の食のメリハリがあるからこそ、それぞれの良さを感じることができる。食卓の在り方を考えなおすいい機会になった。
「でも、身体に良いとされるものをストイックに極めることは、たいていはストレスになります。食事はおいしく、楽しく感じるものでなければ意味がないですから、なにごともほどよいバランスですよね」。

キッチンクルーザー主催の
レッスン風景(倫子さん提供写真)

ココロオドリ、ココロヨロコブ スマートBBQ

倫子さんがいうハレの食のひとつであるBBQが米井梨園で月1回開催されている。
「『身体を悪くした人をゼロまで戻すより、悪くならない人を増やすこと』は私のミッションですが、その響きだと重くなるので、ちょっと違う入り口のほうがこの使命に向かってテンション高く取り組み続けられると思うんですよね」と倫子さん。
常々あった食に対してみんなを喜ばせたいという気持ちは、日本バーベキュー協会の下城民夫会長の一言、「僕はスマートBBQという火をみんなの心に点火するだけ」という言葉に共感。すっかりスマートBBQの虜になり、上級インストラクターになり、東京スマートBBQ協会代表を務めるまでに。

倫子さんが企画するBBQは、梨園だけに旬ならではの『豊水食べ放題BBQ』、中華メニューを取りこんだ『ニイハオ!BBQ』など、毎回テーマがユニークだ。
また、男性中心になりがちなBBQをもっと女性が楽しめるようにしたいよねという思いから、『乙女のスマートBBQ』を掲げる。
北欧のカラフルでスタイリッシュな食器類。グリルもカラーバリエーションを揃え、タープや椅子はピンク。食卓が明るくなり、料理がおいしく見えるという大事な意味もある。

メニュー順のタイムスケジュールはお見事だ。それぞれのレシピがタイムリーにおいしく仕上がるよう、肉の焼ける時間配分も計算に入れた細やかさ。
焼き担当はBBQ検定の資格保有者のみ。入れ替わり立ち替わり、みんなで腕前を発揮する。綺麗な焼き目がついた時には拍手が起きる。ちょっとした競い合いも見え、それでまた賑わう。
余計な脂でおいしさを損なわないよう、焼きたての肉を落ち着かせるコツや炭の置き方などで、一味も二味もおいしくなることを知っているツワモノたちが焼くBBQは実にクオリティが高い。
表面の焼け具合と中のレア加減が絶妙な肉に、アレンジしたソース。丁寧に焼くことで旨味が閉じ込められた旬の野菜。参加者の感嘆の声がいたるところで聞こえる。
感化されてBBQ検定を受ける人も少なくないそうだ。
焼き手のもてなしをみているうちに、参加者は料理を並べたり、使ったお皿を洗ったりと自分たちがやれることに自発的に動き出す。スマートBBQは、料理もスタイルも、そして心の通じ合い方もスマートなのだ。

さて、今回、倫子さん提案のレシピはステーキ用の梨ダレ。
火入れをしないため、やわらかな味が特徴の生しょうゆと爽やかな甘みをもつ梨の組合せは、まさに倫子さんが唱える「素材のすっぴんのおいしさを生かす」ものに。
「梨は消化も助けるし、梨園ならではの特製ダレです!」と倫子さん。
梨が旬の季節、果実としてだけでない楽しみ方を教えてもらった。

プーパッポンカリーに
再仕込しょうゆを加え和風に。

テリヤキチキンには
出汁しょうゆとみりんを1:4で。

爽やかな甘みを含む
梨のタレは子どもも喜ぶ

『文右衛門蔵版 BBQ梨ダレ』作り方(4人分)

【材料】
・梨 2個
・生姜  小指の爪程度の大きさ
・生しょうゆ 大4

【作り方】
①梨をすりおろし、果汁と果肉に分ける。
②果肉とおろした生姜と生醤油を混ぜて出来上がり。ステーキに絡めて食べる。
*ホースラディッシュ+生しょうゆバージョン(写真右のタレ)もぜひお試しを。

沁みわたる心の栄養

「私がBBQや食についてこんなに楽しくできるのは、ここがあるから。農家に生まれてよかった!」と倫子さん。
「自分がやっていることを改めてみてみると、誰もの笑顔に繋がる手料理を作ること。母が普通にやっていたことを引き継いでいるんだなあという気がします」。
倫子さんが繰り広げるスマートBBQでは、空の下の食卓で、コミュニケーションが弾み、刺激を受け合い、どんどん仲間が広がっている。
絹恵さんの作る梨を買いに来る人たちは「おいしい梨はもちろんだけどね、ここに来ると気持ちが良いのよ。自分たちが活性化されるみたい」と声を揃える。
母娘が紡ぐ「豊かな食」の道は、体の栄養のみならず、心の栄養という素晴らしい副産物をもたらしている。

カラフルでスタイリッシュな
器にテンションもあがる

子どもたちは自由に
畑を冒険

親子で
料理体験の場にも

最高のBBQを披露する上級者たち
(左から遠藤智さん。島田拓弥さん・大野浩史さん・梅村吉正さん)

BBQスイーツまで極める茨城BBQ協会会長の 黒澤浩道さん。紅茶シニアインストラクターとしてレクチャーも

栄養士・BBQの同志である坂本紅さん。
倫子さんと共にレシピの
アイデアを出しあう

初参加の人は
梨むきにチャレンジ!
梨がBBQの良いインターバルに

集った人たちとBBQという共通の話で盛り上がれるのが楽しい
(右:佐藤滋之さん左:古川勝敏さん)

ここのBBQはクォリティ高すぎ!
刺激多くて
やみつきになりそう~

文右衛門蔵はいかがでしたか?

普段安価で使っている市販のものと大差ないだろうと使用前は思っていたので、繊細な味わいが随所に出てくることに驚きました! 
生しょうゆの透き通る美しさにも感動です。
梨タレにした時のサッパリした味にも透明感を感じました。
余計なものが入っていない調味料は素材を生かす力があるのだと思います。

取材・文/山本詩野 写真/松本祥孝

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