入江亮子さんのおもてなしバトン

第三走者 ピーター・アイビーさん

第四走者 入江亮子さん 第五走者 松野章弘さん・森田節子さん夫妻

日本料理の五味五法五色を研究する「温石会」主宰。四季をいかした懐石を教えるほか、茶事の出張料理も行っている。 また、利酒師・日本酒学講師・酒匠として、日本酒と料理のマリアージュも数多く提案。
http://moon.ap.teacup.com/onjakukaitop/

松野:1999年 東京都福生市に陶芸スタジオ「Kurage(海月)」開設。磁器にシンプルな象嵌をほどこした清潔感のある作品が特徴。
森田:ワイヤーで植物や日常のアイテムをモチーフにしたオブジェを作る。紙の立体シリーズも人気。
食べることが大好きな夫婦で、揃って料理の腕が抜群。

入江亮子さんが選んだのは「出汁しょうゆ」


「ピーターさんのソースは
ヨーグルトと胡麻油が
ポイントね」

料理とお酒と器の繊細な関係が好き

日本料理の奥深さを追求していたら唎酒師にまで到達した入江亮子さん。
ピーターさんのグラスに日本酒を注ぎ、「グラスの底のツノによってできる凹みが、香りを豊かにするからこのグラスは大吟醸にいいですね。うん、おいしい~」と嬉しそうに一杯。
料理とお酒と器の関係は日本文化として必然という入江さん。松野さん夫妻を思い浮かべ「お酒好きの陶芸家には…」。
さて、文右衛門蔵出汁しょうゆを用いて日本料理研究家ならではの一品は?


料理の世界はバランスが命

料理好きというより、様式美へのこだわりから和食の世界へ

料理家の多くは料理が好きでその道に進むが入江さんは違った。
「小さい頃、母の盛付けが気に入らなくて食べないことが多かったんです。なぜかわからないんだけど、どうも食べる気がおきない。変わった子でした」。
調和がとれて美しく盛られた日本料理を食べた時に、長い間のその謎がすっと解けた。

丸い形には四角い器。黒い(暗い)色は白い(明るい)器に。奇数で盛るとおさまりが良い…など、目に映る美しい在り方。陰と陽のバランス。 潜んでいた、たけた審美眼が幼い彼女をムズムズさせていたのだった。


しっかりした味をいかした醤油あん

2013年末に「無形文化遺産」に登録が見込まれた和食は、まさに五感でいただく料理。季節によって、素材だけでなく器も変える文化は日本にしかない。
絶妙なタイミングですっと料理を出す。たかが料理、されど料理。一連の中に秘められる洗練された美しさ、この様式美が、求めていた世界だったと気づいてからは全て合点で、より追求したいと日本料理の世界に入った。


日本酒用冷蔵庫には
銘柄の一升瓶がぎっしり

松野さんに届けるレシピは、冷えたつきだしとして出てくる胡麻豆腐を主役に、生湯葉で巻いて揚げた温かい料理。出汁しょうゆの整った味をそのままいかしてあんかけにするとはさすが。まつたけや銀杏を添えすっかり旬の美しさをまとった。
「胡麻豆腐って余るとアレンジが思いつかないでしょ。これお勧めよ」。

五味五法五色(*)を探求する「温石会」を立ち上げ、懐石料理を教えながら、繊細な嗅覚、味覚を要する唎酒師としても活躍。
「間(ま)の美しさに触れる繊細な茶事も日本料理もタイミングが命で、舞台裏はある意味戦場。せっかちな自分には瞬発力が物申すこの世界が合っているみたい」。
動と静の世界をバランスよく扱える感性の持ち主はそう笑う。

*五味五法五色:五味「甘・酸・辛・苦・鹹(塩辛い)」という味覚。五色は「白・黄・赤・青(緑)・黒」で食材の色。五法とは「生・煮る・焼く・揚げる・蒸す」という調理法。
中国の陰陽五行説がもとだが、和食の定式となっている。

胡麻豆腐の湯葉包み 出汁しょうゆあんかけ(4人分)

☆材料
胡麻豆腐 3×4㎝を4個(材料は別記載/市販でもOK)
生湯葉 10×12㎝ 4枚
揚げ油 適宜
銀杏 2~3個
人参 各2㎜
きのこ類 適宜
柚子 適宜
出汁か玉酒 2カップ
出汁しょうゆ 大2
みりん 大1.5
片栗粉 大1(同量の水で割る)
*玉酒は水と酒をあわせたもの。1:1がポピュラー

☆作り方
1)胡麻豆腐を作る(市販でもOK)
 A)水(2C):くず粉(大5):ねり胡麻(大3)をよく溶かし、一度漉して火にかける
 B)ねばりが出てきてから20分はよく練る
 C)Bにみりん・塩を少々加え(分量外)、火を止め、流し缶に入れて冷やす
2)胡麻豆腐をカットして、湯葉で巻き、170℃の油で揚げる
3)出汁(か玉酒)を温め、出汁しょうゆとみりんで調味し、片栗粉でとろみをつける
4)銀杏は殻をとり、薄皮は茹でてむく
5)人参は楓型に抜き、茹でる
6)3に銀杏、人参、きのこ類を入れて温め、2にかける


五感をよび覚ます和食の美学ここにあり

「文右衛門蔵 出汁しょうゆ」はいかがでしたか?

風味がきいて、完成された味ですね。こういう完璧なものは、アレンジしないほうが生きるので私たち料理家泣かせなんですよ(笑)。焼きナスやお浸しにそのままかけて食べるのが一番美味しいです。それから醤油は鮮度が命だからこのサイズ感がいいですね。

おもてなしバトンを松野章弘さん・節子さんへ

日本酒好きで、料理好きで、陶芸家といえば、もうおいしいバトンランナーにふさわしいでしょう(笑)。料理と器は様式美の同志。感性豊かな松野さんご夫妻、ときめきのレシピよろしくお願いしま~す。

取材・文/山本詩野 写真/松本祥孝

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