増本年治さん・大島久典さんのおもてなしバトン

第九走者 パラダイス山元さん

第十二走者 地元、宮島を愛する仲間代表 大島久典さん(右) 増本年治さん(左)

増本年治(Mr.トーマス オーナーシェフ)
大学卒業後、飲食業界に飛び込み、カフェレストラン店長を3年経験後、独立し「Mr.トーマス」を開業。イタリアでの料理修行、フレンチレストランでのソース修行を経験し、現在は地元食材を活かした料理に取り組んでいる。

大島久典(AZLinks代表 地域活性化コーディネーター)
大学卒業後、機械設計エンジニアとして自動車設計に7年間携わる。お客さんの顔が見える仕事をしたいとの想いで2010年に独立し、現在は広告業・体験観光業を通じて地域活性化に携わる。

2人は共に生まれ育った広島県廿日市市大野で、それぞれの得意分野を活かし、力を合わせて食と人を通して地域活性化に取り組んでいる。

1984年神奈川県横浜市生まれ。法政大学卒業後、株式会社CSKシステムズに就職、システムエンジニアとして3年間勤務後退社。
飲食業界未経験から、2010年12月、横浜の関内吉田町に飲食店「Cafe&DiningSAKAE」を独立開業。2014年7月、逗子海岸に夏季限定営業の海の家「Seaside Living」を建築家のパートナーと共同オーナーとして開業。地産地消の考えを軸に、「Cafe&DiningSAKAE」では横浜野菜など地元食材を使った料理を提供、「Seaside Living」では湘南鎌倉野菜など地元食材を使った海の家料理を提供している。飲食店営業以外にも、ウェディングパーティーをはじめ各種パーティーへのケータリングも好評で精力的に活動中。現在は2014年冬に静岡県で開催される芸術祭の期間限定カフェの立ち上げに参画中。
Cafe&DiningSAKAE」/「Seaside Living」/「SAKAEケータリング

増本年治さんが選んだのは「煎り酒」


加瀬さんから届いた
レシピとバトン。
「スペイン料理もいいですね」
と増本さん

地元愛から広がる輪

加瀬まなみさんからバトンが渡ったのは広島・廿日市市大野に住む大島久典さんと増本年冶さん。宮島を対岸にみるこの地域に生まれ、地元を盛り上げている中心人物だ。
二人は幼稚園時代からの親友で、互いの人生を応援し合う大事な存在。「ますちゃん(増本)ちにはファミコンがあったからいつも入り浸ってた(笑)」と大島さん。「まんちゃん(大島)は前向きに物事を考える人なので気が合うんです」とは増本さん。
増本さんは地元を離れることなく、現在ピザをメインにしたイタリアン「Mr.トーマス」のオーナーシェフとして活躍する。大島さんは関東に出た後帰郷し、広告業や体験観光業に携わりながら地域活性に力を注ぐ。
地元の優れた農家や水産業の人たちと食を通して地元力を発揮する増本さんに、培ったPRエッセンスや新しい風を大島さんが時折吹き込むというほどよいバランス関係の二人。今回は増本さんが地元の食材と文右衛門蔵とのコラボレーションをお披露目してくれる。写真はますちゃんを熟知する大島さんが担当した。
呼応する二人のおもてなしバトン、地元愛から広がる輪があいまって、さて、いかなる展開に。


増本さん自身が研究し
見出した味の五原要素
からのアプローチ
(編集部撮影)

自分らしい味探し

18歳から飲食のアルバイトをしていた増本さん。厨房も任されることが多く、自分が作ったものを喜んで食べてくれるお客様の姿を見て、やりがいが芽生えた。
知能情報学を専攻した大学では、甘味、酸味などの五味を分類研究。シェフに欠かせない感性はもちろんだが、研究で構築した見解はいまだにレシピ創作やスタッフ指導の時に役立っているという。
24歳から本格的に食の道に。特に調理師学校に行ったわけではない。「僕の先生は肉なら肉屋さん、魚は魚屋さん、ケーキはケーキ屋さん。わからないことがあると、すぐ専門のお店に行って聞いた。「みんな厨房まで入れてくれて快く教えてくれたから今日の僕がある」という。
一番の師匠は市内でビストロを営むフレンチシェフ。70代の今も現役だ。彼のソース(だし)で味の組立を学んだ。自分の力量あっての料理。全てを教えてもらえないことは承知だ。実際に注文して食べながら、カウンター向こうの厨房の動きを窺う。大切なのは感覚を研ぎ澄ますことだった。

地元食材だからこそ、より深い味わいに

増本さんの感性は食材選びにも発揮される。瀬戸内の大野、この辺りはあさりを始め魚貝が有名だが、ある日親戚が持ってきたトマトが、本来の酸味をしっかり感じられる抜群の旨さ。聞くと近所の農家のおばあさんが育てていると。すぐに出向き、出荷を依頼した。増本さんのトマトソースに欠かせない存在となった。
「宮島ムール」との出会いも大きい。牡蠣いかだで牡蠣と同じ栄養分を摂りいれながら育った宮島ムールは旨味が凝縮されていて、出汁も豊かな風味。広島牡蠣、広島レモンに肩を並べる地域資源に認定されたそうだ。地元をよく見渡せば豊富な食材。「真摯にいいものを作っている生産者さんが身近なところにいるのだから、その食材を料理しないと地元でやっている僕の意味がない」。
(写真:左)今回はほんのり出汁しょうゆを加え宮島ムールをベルモット蒸しに
(写真:右)「僕らでも気づかない宮島ムールのおいしさを体験させてもらいました」濱本水産社長(前列左から2番目)。宮島ムールの生みの親でもある米原専務(左)は「増本さんのところでこうやって料理してもらっていると、生産者が見る機会がないお客様の喜ばれる顔が見えて嬉しいですね」


「常に目線を上げて進む増本さんに学びが多い」。増本さんの信念を理解して動くホールの仲田大輔さんとセカンドシェフの吉田暁一さん。偶然にも増本・大島コンビのような幼馴染関係の二人!

人生観をシフトさせた縁

増本さんと大島さんがシフトしたという大きな出会いがある。
ある日初めてお店に訪れた男性。「一番おいしいと思うものをお願いします」。こういうオーダーをする人がいるなんて面白いと、カルパッチョなどソースが決め手の料理を出した。「おいしかった。ありがとう」とお客様が帰った後、改めてやりがいを実感している自分がいた。
「その人によって料理だけでなく店の佇まい、在り方、考えてもみなかったことの発見がありましたね」。
その後、その人から本場に行くよう背中を押され、すぐにイタリアに。料理の発祥地域を食べ歩くことで文化との関係や街づくりに触れ、行く先々で気さくなイタリア人シェフたちに飛び入りで厨房に参加させてもらった経験も今にいかされている。
大島さんもまた、同じ人物に言われた言葉に響き今日がある。「自分が選択して背負ってやることの醍醐味は人生を数倍厚くする」。聞いた直後に独立の一歩を踏んだ。
人が喜んでくれる姿から得る喜び。喜びの連鎖のために深めていく追求心を二人は忘れない。


コンサートでは、誰でもが参加できてみんなで楽しさを作っていく(増本さん撮影)

場は物が作るのではなく人が作る

地元が大好きで、活気に満ちた町にしていこうというのが二人の掲げるビジョン。
若者も年寄りも地域の人たちが笑顔に溢れ、外からの人とも繋がるときの達成感は最高だ。
大島さんは仕事の傍ら、商工会青年部での活動を通して様々な地域の人や資源と出会ったり、また観光客に海からの宮島の美しさに触れてもらうカヌー体験でも輪を広げている。
増本さんは世界中を震撼させた9.11の悲劇を機に毎年9月に入場無料の平和と音楽の祭典コンサートをレストラン内で開催。音楽、ダンスなど出演したい人を毎年募り、お客様参加型のイベントをするのは、「場は物が作るのではなく人が作るということ」をみんなで体感し、その場に居合わせた人たちによって生み出される喜びを共感することが大切だからという。

今回も宮島の美しさや地元の良さに魅了された人たちが集い、増本さんが文右衛門蔵で腕を振るって賑やかなパーティに。メインは煎り酒をジュレにした瀬戸内スズキのカルパッチョ。ジュレ状にすることでクセのある瀬戸内のスズキにタレが絡み、そのマッチングをしっかり味わえるそうだ。生しょうゆをあわせたバーニャカウダソースは生野菜と。
サプライズで広島県漁連から鯛、広島魚市場からは名物兄弟漁師(深水の小林兄弟)が獲る音戸しらすの差し入れも!増本さんのシェフ魂に火がつき、腕が鳴る。
世界文化遺産の厳島神社が厳かに佇む日本三景の宮島。その美しい景色も堪能しながら、弾む会話や広がる縁に、ますちゃん、まんちゃんコンビは嬉しさを噛みしめていた。


琥珀色の輝きが
美しい煎り酒ジュレ


音戸しらすの即席オムレツ!
ソースはだいだいポン酢を
アレンジ

~地元を愛する仲間たちが集合!~

(左上)鍛冶屋の岡本友紀さんは地元の人気作家。
手製のキャンドルスタンドでテーブルを華やかにしてくれた(右下)。
(右上)祖母の畑仕事を手伝っていたという藤崎将さんは何の迷いもなく、
地元の野菜を使った仕事をしたいと、オリジナルのお漬物を展開。
増本さんと大島さんを貴重な先輩と仰ぐ。
(左下)みんなのいただきますバトンの出汁しょうゆのスタートは広島!
第一走者の佐藤さんも駆けつけ、賑やかに!
(中央下)牡蠣のゆるキャラ「ヘルシーくん」もサプライズ登場!

「瀬戸内のスズキと煎り酒のジュレ」(4人分)

☆材料
煎り酒 150cc
日本酒 100cc
ゼラチン 5g
水 30cc 
*好みですだちを数滴
白身魚の刺身(今回は瀬戸内のスズキ)

☆作り方
1)煎り酒と日本酒を鍋に入れ、沸騰させ、約1分したら火を止める
2)水にゼラチンを溶かし、湯せんでふやかす
3)2のゼラチンを1に入れてよく混ぜる
4)自然に粗熱をとり、タッパーに入れ、冷蔵庫で一晩冷やす
5)固まった4を小さいフォークで軽く

★今回のレシピでは「バジルソース」と「ヴィネグレットソース」も添えています。

○バジルソースの作り方
松の実 20g
エクストラバージンオイル 300g
バジルの葉 100g
にんにく 1かけ
*全ての材料をミキサーにかける

○ヴィネグレットソースの作り方
玉ねぎ(小) 1/2個
エクストラバージンオイル 600cc
フレンチマスタード 小1
ワインビネガー 50cc
レモン汁 レモン半個分
ウスターソース 適量
塩 少々
オレンジジュース 適量(柑橘系でほんのり甘めのがお勧め)
*全ての材料を混ぜる


お皿は山根対厳堂3代目山根興哉(こうさい)さん作の宮島焼
*厳島神社参拝の縁起物として江戸時代から始まった宮島焼。厳島神社の砂を粘土に練り込んで焼いていることからお砂焼とも呼ばれる。

「文右衛門蔵 煎り酒」はいかがでしたか?

独特のクセがある瀬戸内のスズキに煎り酒を合わせてみたいと思いました。スズキのクセに負けない味のコシと香りがこの煎り酒にはありますね。今回のジュレの煎り酒は少し日本酒で薄めましたが、濃いめが好きな人はそのままで。ヴィネグレットやバジルソースとも相性よかったです。洋風アレンジがしやすく、面白い皿に仕上がったと思います!
「さすが、ますちゃん!」(大島さん)

おもてなしバトンを小松 由和さんへ

文右衛門蔵シリーズを全部試して、それぞれに味わい深いしょうゆ、調味料だと思いました。
しょうゆーことで、おもてなしバトンを広島大野、宮島から繋げますので輪を広げてくださいねー!

取材・文/山本詩野 写真/大島久典
撮影協力/安芸グランドホテル

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